2025年07月08日
今年のセレクションセールには、当場生産馬からプレミアムセッションに2頭、2日目に3頭の計5頭が合格しています。
今回は、そのなかでプレミアムセッションに上場予定の№5ハーランズルビーの2024を紹介させていただきます。
本馬の牝系解説文(ブラックタイプ)はこちらからご参照ください。
上記の360℃画像は、クリックもしくはタップしながら横にスライドすると回転していきます。
【7月7日現在】体高156cm 胸囲175cm 管囲21.0cm 馬体重473kg
写真・動画撮影していただいたときはまだまだ草太りの馬体でしたが、セール2ヶ月前からセリ馴致を始めるなかで絞れてきて、より雰囲気のあるスタイルになってきました。
本馬は現在、草太りが目立ってくると一時的に制限放牧に切り替える日があるものの、基本的には昼夜放牧をしながらセリ馴致をしています。
当場の方針として、当場内でセリ馴致する際はセールに上場することだけを目的とせず、将来の競走馬という意味でもしっかりと基礎体力を付けて送り出したい思いから昼夜放牧も同時に実施しています。
G2日経新春杯勝ちのモズベッロ(2017年セレクションセール取引馬)、国内外の重賞を4勝している現役馬ディープボンド(2018年セレクションセール取引馬)、G3エルムS勝ち馬フルデプスリーダー(2018年セレクションセール取引馬)、昨年のG2札幌記念のほかG2AJCCとG3エプソムCの勝ち馬ノースブリッジ(2019年セレクションセール取引馬)、そして昨年のG3葵SとG3北九州記念の勝ち馬ピューロマジック(2022年セレクションセール取引馬)。
彼らはすべて当場生産によるセレクションセール上場馬ですが、当場内で昼夜放牧をしながらセリ馴致をしてセール上場した馬たちです。
正直なところ、昼夜放牧をしながらセリ馴致をすると疲労が溜まりやすいのですが、そのあたりは獣医に相談するなどして適切なケアをしてもらって対応しています。
これまで同様、セール当日に向けて細心の注意を払いながらセリ馴致を進めていきます。
本馬はG2日経新春杯勝ち馬モズベッロの半弟になります。
本馬の母ハーランズルビーは芝向きの種牡馬を配合すると芝向きの産駒が、ダート系種牡馬を配合するとダート馬を出す傾向にあります。
半兄モズベッロは芝の中距離を得意としていた馬なので、そのカテゴリーに属する種牡馬サートゥルナーリアを配合して本馬が生まれました。
そのサートゥルナーリアの初年度産駒は現3歳になります。
彼の産駒にはG2京都新聞杯勝ち馬ショウヘイや、G3毎日杯勝ち馬ファンダムがいるなど、やはり父が得意としていた芝中距離で活躍している印象です。
産駒の勝ち馬の比率も、芝の勝ち鞍が8割に対してダートが2割なので、基本的には芝向きの産駒を出す種牡馬なのでしょう。
そのサートゥルナーリア産駒について、初年度産駒が現3歳なので多くのデータはないものの、獲得賞金上位50頭の血統傾向を調べると以下のような特徴が見られました。
①Halo(もしくはその息子サンデーサイレンス)のクロスを持つ産駒 39頭/50頭
②母方にNasrullah/Princequilloに代表されるようなNearco/Prince Roseのニックから成る血を持つ産駒 35頭/50頭
③Mr.Prospectorクロスを持つ産駒 26頭/50頭
④Buckpasserクロスを持つ産駒 19頭/50頭
⑤Special(Nureyevの母、Sadler’s Wellsの2代母)クロスを持つ産駒 15頭/50頭
⑥Nijinskyクロスを持つ産駒 12頭/50頭
①に関しては、母方にサンデーサイレンスの血が入っていれば満たされる条件なので、特別珍しい傾向ではありません。
本馬の場合は、母ハーランズルビーがHalo4×3を持っているので該当します。
②に関しては例えばSecretariat、Seattle Slew、Sir Gaylord、Riverman、Mill Reefのような血脈が該当します。
これについては、父サートゥルナーリアがSecretariatやSir Gaylordあるいはマルゼンスキーといった同様の血統背景を持つ血脈を複数保有している点が関係しているのかもしれません。
本馬の母もまた、Secretariat5×5やDowagerといった同傾向の血脈を持つので、本馬は②にも該当します。
サートゥルナーリアが持っていた血統パターンを踏襲することで、父の持つ競走能力が本馬に遺伝されることが期待できます。
③に関しては、母方にGone Westを通じてMr.Prospectorの血を持っているので本馬も該当します。
④については、母方にBuckpasserの血が含まれていないので本馬には該当しません。
⑤のSpecialはNureyevの母、Sadler’s Wellsの2代母にあたる名牝で、優秀な競走馬の血統表にしばしば登場する名前です。
父サートゥルナーリアはその父方にNureyevを、母方にはSadler’s Wellsの血を持つため、結果としてSpecialのクロスを持つ血統パターンをしています。
この血統パターンを踏襲するサートゥルナーリア産駒も活躍傾向にあるということでしょう。
なお、本馬の母方にはSpecialの血はないので⑤には該当しません。
⑥のNijinskyクロスに関しては、本馬の母方にこの血がないので該当しません。
ただ、父サートゥルナーリアの血統においては、自身でNijinsky7×5を持つほか、このNijinskyと相似な血の関係であるStorm Birdの血を合わせてStorm Bird≒Nijinskyの相似クロスを形成しています。
いずれも父がNorthern Dancerで、母の父がBull Pageもしくはその息子という点で共通しています。
本馬の血統にはNijinskyクロスはないものの、Storm Cat4×4のクロスを通じて父の持つStorm Bird≒Nijinskyを強化するような配合にしています。
サートゥルナーリア産駒にはまだG1勝ち馬は出ていないものの、産駒の血統傾向を見る限り、HaloやMr.Prospectorといった素軽いスピード血脈が強化されていて、そこにSpecialの瞬発力やNearco/Prince Roseがもたらす持続するスピードが加わっている印象です。
さらには、他の2つの傾向であるBuckpasserやNijinskyのクロスは底力やパワー、重厚なスタミナを与えてくれます。
このような血統傾向を伝えることができるサートゥルナーリアならば、そのうちG1勝ち馬も出してくるでしょう。
本馬の緩さを残す馬体は、半兄モズベッロにも見られた特徴だったので、母由来と感じさせるものがあります。
一方で、気性面は1歳馬のなかでは大人びていて、牡馬らしく放牧地で他馬に仕掛ける面など競走馬向きの気性をしていると感じています。
馬格もあるので早期のデビューというタイプではないかもしれませんが、モズベッロのように古馬に向けて成長しながらしっかりと結果を残せる馬に育ってほしいです。
本馬に関してお問い合わせがございましたら牧場公式サイトからご連絡いただくか、当ブログに連絡先を添えてコメント欄にご記入くださるようお願いいたします。
当場から折り返し連絡させていただきます。