2025年07月18日
今年のセレクションセールには当場生産馬が5頭合格していますが、今回はセレクションセール2日目に上場予定の№247アヴォンリーの2024を紹介させていただきます。
本馬の牝系解説文(ブラックタイプ)はこちらからご参照ください。
上記の360℃画像は、クリックもしくはタップしながら横にスライドすると回転していきます。
【7月7日現在】体高155m 胸囲178cm 管囲20.0cm 馬体重455kg
本馬の母アヴォンリーはJRAのダートで3勝した馬で、ダート1200という短めの距離を得意としていました。
アヴォンリーのきょうだいはもう少し距離があった方がよいタイプが多いので、アヴォンリーの短距離スピードは彼女の父ヘニーヒューズに由来するものと見て間違いないでしょう。
実際、アヴォンリーはヘニーヒューズの牝馬らしく、普段から気の強さを前面に出すタイプの馬です。
ただし、馬格のほうは彼女の母ラヴァーズレーンの産駒らしく、牝馬ながら現役時代は480kg前後で競馬できたほどの恵まれた馬体をしています。
本馬も1歳牝馬としては十分な馬格を備えていて、このあたりは馬格のある父母から生まれた点が大きいでしょう。
現在は、地元の育成公社さんにセリ馴致のために預かってもらっています。
本馬の父エスポワールシチーは、ダート系名種牡馬ゴールドアリュールの後継種牡馬として実績のある種牡馬です。
特に交流重賞で活躍している印象が強く、その最たる例は交流G1JBCスプリント勝ち馬イグナイターでしょう。
そのエスポワールシチー産駒について、獲得賞金上位50頭の産駒の血統傾向を調べてみると以下のような特徴が見られました。
①母方にMr.Prospectorの血を持つ産駒 38頭/50頭
②母方にNasrullah/Princequilloに代表されるようなNearco/Prince Roseのニックから成る血を持つ産駒 26頭/50頭
③母方にBuckpasserの血を持つ産駒 21頭/50頭
④Nureyevクロス、あるいはNureyev≒Sadler’ s Wells(Fairy King)の相似クロスを持つ産駒 17頭/50頭
⑤Haloまたはサンデーサイレンスのクロスを持つ産駒 15頭/50頭
⑥Nijinskyクロスを持つ産駒 15頭/50頭
⑦Danzigクロスを持つ産駒 15頭/50頭
①の母方にMr.Prospectorの血を持つ産駒が活躍傾向にあるというのは、父エスポワールシチーがHail to Reason4×4を持っていることに関係しているように思います。
Hail to Reasonの血は、Mr.Prospectorの母Gold Diggerと相似クロスを形成する関係だからです。
両者の父系はRoyal Charger≒Nasrullahの関係があり、そのほかにもBlue LarkspurやSir Gallahad=Bull Dogの血を持つ点で共通しています。
父エスポワールシチーが現役時にダート1600前後を得意としていたことを考慮すると、このHail to ReasonとMr.Prospectorという北米のスピード血脈を活かす配合は、父の競走能力を受け継がせるには理に適っていると考えます。
本馬は母方にMr.Prospectorの血を持たないので①には該当しないのですが、母方にあるAlydarの母Sweet ToothもまたHail to Reasonと相似クロスを形成する関係なので、この項目に近い配合だと言えます。
②のNearco/Prince Roseのニックから成る血というのは例えばSecretariat、Seattle Slew、Sir Gaylord、Riverman、Mill Reefのような血脈が該当します。
本馬は母方にSecretariatやボールドラッドの血を持つので②に該当します。
③については、本馬は母方にマルゼンスキーを通じてBuckpasserの血を持つので該当します。
この③については、①と連動して母方にMr.Prospector×Buckpasser牝馬から成る血(Seeking the GoldやWoodman、マイニングなど)を持つエスポワールシチー産駒が活躍傾向にありました。
この①と③の傾向を見る限り、母方に北米血脈が多いほうがエスポワールシチー産駒は活躍する傾向にあるのかなと感じます。
本馬は母父ヘニーヒューズなので、母方に比較的多くの北米血脈を内包しています。
ただ、その一方で④のNureyevクロスやNureyev≒Sadler’ s Wells(Fairy King)の相似クロスは欧州血脈と言えるものです。
エスポワールシチーがゴールドアリュール系種牡馬と考えた場合、ゴールドアリュール産駒のなかにはクリソベリルのように④の血統的特徴を強く持つ活躍馬もいます。
この父系の種牡馬に配合する場合、④のような特徴を活かす配合は有効なのかもしれません。
ただ、本馬は④には該当しません。
⑤のHaloまたはサンデーサイレンスのクロスを持つ産駒については、現代の多くの繁殖牝馬がサンデーサイレンスの血を持つので、このような血統的特徴を持つ馬は自然と多くなります。
ただ、その割りにはエスポワールシチーの活躍産駒のなかで大きなウェイトを占めてないように感じます。
エスポワールシチー産駒においては、必ずしもこの系統のクロスを必要としないのかもしれません。
本馬は⑤には該当しません。
⑥のNijinskyクロスを持つ産駒については、個人的な見解として、このクロスを持つ馬には胴回りがしっかりした産駒が多い印象を受けます。
エスポワールシチー自身は、ダート系種牡馬の割りには馬体に素軽さがあるので、ダート系のパワーを加えようとするならばこのNijinskyクロスは有効なのかもしれません。
本馬は⑥に該当します。
⑦のDanzigの血については、エスポワールシチー産駒のようにダートでスピードを発揮するタイプにとって、立派なトモをもたらずDanzigの血とは相性が良いのでしょう。
本馬の母方にはDanzigの血がないので⑦には該当しません。
こうして見ると、本馬の血統は7項目中4項目のみ該当ということになります。
一方、母アヴォンリーの血統はトキノステラの2024の記事でも触れたように、Storm Cat系×モガミヒメ牝系の血統パターンを持ちます。
この配合から重賞4勝のディープボンドや現役OP馬のドンアミティエが出るなど、当場で何度も試みてきた配合であり、彼女もまたこの配合から生まれています。
実際、アヴォンリー自身もJRAで3勝クラスまで行った馬で、現役時は優秀な競走能力を発揮してくれました。
Storm Cat系×モガミヒメ牝系の配合で最大のポイントは、Storm Cat≒モガミポイント(モガミヒメの母)の相似クロスができる点です。
この両者は、Storm Bird≒NijinskyやSecretariat≒ボールドラッドでリンクしていて血統的な類似性が高い関係です。
また、両者は多くの北米血脈を含んでいて、その点でエスポワールシチーと相性が良いと判断しています。
総合的に考えて、本馬の血統からはダートのマイル以下でスピードを発揮するようなイメージを持っています。
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