2025年07月19日
今年のセレクションセールには当場生産馬が5頭合格していますが、最後に紹介させていただくのは№371エイシンキルデアの2024です。
本馬の牝系解説文(ブラックタイプ)はこちらからご参照ください。
上記の360℃画像は、クリックもしくはタップしながら横にスライドすると回転していきます。
【7月7日現在】体高155m 胸囲173cm 管囲20.3cm 馬体重445kg
本馬はセール2カ月前から当場の1歳分場にてセリ馴致を施しています。
当場の方針として、当場内でセリ馴致する際はセールに上場することだけを目的とせず、将来の競走馬という意味でもしっかりと基礎体力を付けて送り出したい思いから昼夜放牧も同時に実施しています。
G2日経新春杯勝ちのモズベッロ(2017年セレクションセール取引馬)、国内外の重賞を4勝したディープボンド(2018年セレクションセール取引馬)、G3エルムS勝ち馬フルデプスリーダー(2018年セレクションセール取引馬)、昨年のG2札幌記念のほかG2AJCCとG3エプソムCの勝ち馬ノースブリッジ(2019年セレクションセール取引馬)、そして昨年のG3葵SとG3北九州記念の勝ち馬ピューロマジック(2022年セレクションセール取引馬)。
彼らはすべて当場生産によるセレクションセール上場馬ですが、当場内で昼夜放牧をしながらセリ馴致をしてセール上場した馬たちです。
正直なところ、昼夜放牧をしながらセリ馴致をすると疲労が溜まりやすいのですが、そのあたりは獣医に相談するなどして適切なケアをしてもらって対応しています。
これまで同様、セール当日に向けて細心の注意を払いながらセリ馴致を進めていきます。
本馬の母エイシンキルデアは、国内の繁殖馬セールで購買した馬です。
本馬のきょうだいのなかで、当場が配合段階から携わった産駒はインテグレイト(牡4歳、父キタサンブラック、現JRA2勝)が最初の当場生産馬になります。
エイシンキルデアの産駒はこのインテグレイト、現3歳のマイキー(牡、父ヘニーヒューズ、現南関東2勝)、現2歳の半兄(父インディチャンプ)そして本馬と、すべてセレクションセールに合格しています。
バランスの取れた好馬体がこのきょうだいの特徴で、それは本馬にも言えると思います。
本馬は5月生まれながらすでに体高は155cmあり、まだまだ成長段階にあります。
誕生時も63kgで生まれていて、一部の小柄なオルフェーヴル産駒とは異なる成長曲線を描いています。
オルフェーヴル産駒に関しては、気性面を懸念される方もいらっしゃいますが、本馬に関しては当場の1歳牡馬のなかでも普段から扱いやすいと言えます。
また、セリ馴致を始めてからもウォーキングマシンや馬運車に対して比較的早く順応してくれたので、賢さも備えていると思います。
もちろん、当場を巣立って後期育成に入ればピリッとした面が出てくるでしょうが、牡馬ならばそのくらいが望ましいでしょう。
そのオルフェーヴル産駒について、獲得賞金上位50頭の産駒の血統傾向を調べてみると以下のような特徴が見られました。
①母方にNasrullah/Princequilloに代表されるようなNearco/Prince Roseのニックから成る血を持つ産駒 34頭/50頭
②母方にMr.Prospectorの血を持つ産駒 30頭/50頭
③母方にSpecial(Nureyevの母、Sadler’s Wellsやジェイドロバリーの2代母)の血を持つ産駒 21頭/50頭
④Halo(もしくはその息子サンデーサイレンス)のクロスを持つ産駒 19頭/50頭
⑤母方にBuckpasserの血を持つ産駒 16頭/50頭
⑥母方にGraustarkもしくはその全弟His Majestyの血を持つ産駒 10頭/50頭
①のNearco/Prince Roseのニックから成る血というのは例えばSecretariat、Seattle Slew、Sir Gaylord、Riverman、Mill Reefのような血脈が該当します。
本馬の母エイシンキルデアは、Sir GaylordやRose Bowerの血を持つので①に該当します。
この傾向を豊富に持つ血統は質が高く、柔軟性に優れている印象があります。
②の母方にMr.Prospectorの血を持つ産駒というのは、オルフェーヴルの代表産駒ラッキーライラック(母父がMr.Prospector系のFlower Alley)やG1ドバイワールドC勝ち馬ウシュバテソーロ(母父がMr.Prospector系のキングカメハメハ)に見られる血統傾向です。
オルフェーヴルの血統はステイゴールド×メジロマックイーン牝馬の組み合わせなので、血統的イメージからは中長距離向きの印象を受けます。
日本競馬にフィットするには、北米血脈のなかでもスピード血脈として知られているMr.Prospectorの血を入れるのは理に適っているようにも思えます。
本馬の母方にはMiswakiを通じてMr.Prospectorの血を持つので②にも該当します。
③の母方にSpecialの血を持つ産駒に関しては、ある程度血統や配合を勉強している方々にとって、オルフェーヴルにSpecialの血を持つ繁殖牝馬との配合は良さそうと予想できたかなと思います。
すなわち、オルフェーヴルの3代母の父Lt.Stevensが、Specialの母Thongの全兄にあたる関係だからです。
さらに言えば、エレクトロアート≒Specialという相似クロスを形成できるほどの関係も見えてきます。
Lt.Stevens=Thongの全きょうだいのほかに、エレクトロアートの父ノーザンテーストはLady Angela3×2を通じてHyperion4×3を持ちます。
また、Specialの父ForliはHyperionの孫にあたる血統であり、エレクトロアート≒Specialと見なせるほどの関係です。
本馬の母方にはKitten’s Joyの血を通じてSpecialを持つので③にも該当します。
④のHaloもしくはサンデーサイレンスのクロスについては本馬は該当しません。
ただ、本馬の母方にはHaloと相似クロスを形成するSir Ivorの血が入っていて、このあたりは意識した配合になっています。
⑤の母方にBuckpasserの血を持つ産駒については、本馬の母エイシンキルデアがBuckpasser5×4*5を持つので本馬は⑤に該当します。
⑥のGraustarkやHis Majestyの血に関しては、本馬の母方にはないので⑥には該当しません。
このように、本馬の母エイシンキルデアの血統はオルフェーヴルに合うはずだとの思いから、本馬の配合そして誕生に至っています。
エイシンキルデア自身の体高があるので、小柄な馬体に出る可能性のあるオルフェーヴル産駒の傾向を補完する意味でもちょうど良い繁殖牝馬でした。
改めて本馬の馬体を見てみると、オルフェーヴル産駒らしい芝・ダート問わない馬体をしていると思います。
特にオルフェーヴルの影響を感じている点は、本馬の体質です。
昼夜放牧をしながらセリ馴致を施していると関節などの疲れや痛みから、獣医に診察してもらう1歳馬がほとんどのなかで、本馬はその頑強さからそのような治療を一度も受けずにここまできました。
5月生まれでもセレクションセールで十分に勝負できる、と思わせてくれるほどの成長を遂げてくれた本馬。
セレクションセール2日目の上場に向けて、最後まで気を抜かずに飼養管理に努めていきます。
本馬に関してお問い合わせがございましたら、牧場公式サイトからご連絡いただくか、当ブログに連絡先を添えてコメント欄にご記入くださるようお願いいたします。
当場から折り返し連絡させていただきます。