【セプテンバーセール】№477ハーランズルビーの2023(牝 父シルバーステート)

セプテンバーセールまで数日ですが、今回はセール3日目(9月19日)に上場予定の当場生産馬ハーランズルビーの2023(牝、父シルバーステート)を紹介させていただきます。

なお、本馬の牝系解説文(ブラックタイプ)はこちらからご参照ください。

 

 

【9月9日現在】体高151cm 174cm 管囲19.2cm 馬体重443kg

 

本馬はG2日経新春杯勝ち馬モズベッロの半妹で父シルバーステートということもあり、血統的にはセレクションセールに合格できるレベルの馬でしたが、4月中旬生まれで成長を待ちたかったこともあって9月セールへの上場となりました。

体高がそれほどないのであまり大きく見せませんが、ここにきて胴伸びが出てくるなど、さらに馬体が成長してきそうな雰囲気があります。

そのなかでも馬体重は440kg以上あるので、競走馬としてデビューする頃には立派な馬体で臨めそうです。

本馬の血統は、半兄で重賞勝ち馬のモズベッロがディープインパクト系種牡馬のディープブリランテ産駒だったこともあり、同じディープインパクト産駒のシルバーステートと配合して本馬が生まれたという経緯があります。

シルバーステートの牝馬らしい、少し小柄ながらも柔らか味があり、立派なトモからは瞬発力を感じさせる馬体の持ち主です。

 

そのシルバーステートですが、初年度産駒は現5歳世代となります。

2歳世代まで合わせると、4世代がデビューしていることになります。

そのシルバーステート産駒について、獲得賞金上位50頭の血統傾向を調べたところ、以下のような血統的特徴が見受けられました。

 

①母方にHail to Reasonの血を持つ産駒 39頭/50頭

②母方にMr.Prospectorの血を持つ産駒 35頭/50頭

③母方にNasrullah/Princequilloに代表されるようなNearco/Prince Roseのニックから成る血を持つ産駒 35頭/50頭

④母方にBuckpasserの血を持つ産駒 31頭/50頭

⑤Haloクロス(サンデーサイレンスのクロスを含む)を持つ産駒 25頭/50頭

⑥母方にSpecialの血を持つ産駒 21頭/50頭

⑦Nijinskyクロスを持つ産駒 20頭/50頭

 

①のHail to Reasonの血については、すでに父シルバーステートがHail to Reason4×4を持つので、この血統傾向を産駒の代でも受け継ぐ配合になります。

また、⑤で指摘したHaloはHail to Reason産駒であり、現代で繁栄しているサンデーサイレンスもこの血を引くため、シルバーステートの多くの産駒にこの特徴が見られます。

ただ、①の39頭に対して⑤が25頭ということは、残り14頭はHailoを介さない形で母方にHail to Reasonを持つシルバーステートの活躍産駒となります。

その意味では、Haloを介さずとも、シルバーステート産駒にとっては母方にHail to Reasonの血が入っているほうが好ましいと言えるかもしれません。

本馬は、母ハーランズルビーがHalo4×3を持つので①に該当します。

 

②のMr.Prospectorの血を母方に持つ産駒というのは、①のHail to Reasonの血とも関係があると考えます。

なぜなら、Mr.Prospectorの母Gold DiggerはHail to Reasonと相似クロスを形成できる関係にあるからです。

 

 

それぞれの父系がRoyal Charger≒Nasrullahの相似クロスの関係にあり、母方にBlue LarkspurやSir Gallahad=Bull Dogを持つ点で共通します。

シルバーステートがHail to Reason4×4を持つ種牡馬であることを考慮すると、Mr.Prospectorの血を持つ繁殖牝馬と配合することは血統面では理にかなっているように感じます。

本馬は、母方にGone Westを通じてMr.Prospectorの血を持つので②にも該当します。

 

③のNearco/Prince Roseのニックから成る血というのは、例えばSecretariatやMill Reef、Seattle SlewやSir Gaylordなどが該当します。

その上で、シルバーステート産駒の母方に限ってもう少し詳しく調べてみると、そこにNorthern Dancerの血を組み合わせた血脈の存在が見えてきます。

Northern Dancer+Nearco/Prince Roseのニックから成る血、すなわちダンシングブレーヴやStorm Cat、Caerleon、フレンチデピュティ、El Prado、エリシオといった血脈が母方に入っていると、シルバーステート産駒は活躍傾向にあるということです。

③では50頭中35頭が該当するとしましたが、この「Northern Dancer+Nearco/Prince Roseのニックから成る血」まで条件を限定しても、50頭中31頭が該当する血統パターンです。

本馬は母方にSecretariatをクロスで持つなど③にも該当しますし、さらに母方にはStorm Catの血も持つので、これもまたシルバーステート産駒の成功パターンに属すると言えます。

 

①~③の傾向はどちらかと言えば素軽さやスピード、あるいは柔軟性をもたらすような血脈でしたが、④のBuckpasserに関しては重厚さやスタミナの強化をもたらす血脈だと考えます。

シルバーステートの血統にはBuckpasserの血は含まれていないので、一見するとそれほど相性は良くない血に見えるかもしれません。

しかしながら、Buckpasserの血はシルバーステートの母方にあるFlaming Page(Nijinskyの母)と相似クロスを形成するほど血統的親和性が高い関係です。

また、Buckpasserの母Busandaは、シルバーステートが2本持つHail to Reasonの母Northirdchanceとも相似クロスを形成します。

 

 

Hail to Reasonの血はシルバーステートの血統にとって重要だと考えますし、それと相似クロスを形成できるBusandaの血を引くBuckapsserも相性が良い相手なのでしょう。

また、Nijinskyの血も重厚さを伝える血脈なので、その母Flaming PageとBuckpasserを組み合わせることで、シルバーステート産駒に底力を伝える可能性があると考えています。

ちなみに、これは⑦のNijinskyクロスにも関係することですが、ここに登場するFlaming PageとNothirdchance、Busandaの3者はFlaming Page≒Nothirdchance≒Busandaという強力なトライアングルの相似クロスを形成できる関係です。

言い換えると、Buckpasserの血を持つ繁殖牝馬にシルバーステートを配合すると、このFlaming Page≒Nothirdchance≒Busandaを持つ産駒が生まれることになります。

本馬はBuckpasserの血を持たないので④には該当しません。

 

⑤のHaloの血については、①の説明でも言及したのでここでは割愛します。

 

⑥のSpecialの血というのは、Specialの息子であるNureyevや、彼女の孫にあたるSadler’s Wellsやジェイドロバリーの血などがあると該当します。

これは、シルバーステートの母方にRidanの血が入っていることが関係しているかもしれません。

Ridanは、Specialの母Thongの全兄にあたる血統だからです。

本馬はSpecialの血を持たないので⑥には該当しません。

 

⑦のNijinskyクロスについては④の説明で言及したので、ここでは割愛します。

ちなみに、本馬はNijinskyクロスを持たないので⑦には該当しませんが、母方にThe Minstrelを持つので、Nijinsky≒The Minstrelの3/4同血クロスを形成します。

 

以上、シルバーステートの活躍産駒の血統傾向と、本馬の血統パターンを見比べてみました。

全体として、本馬の血統はシルバーステート産駒の活躍傾向を踏襲していると考えます。

 

本馬の緩さを残す馬体は、半きょうだいのモズベッロやエレガントルビー、また2歳の半兄マテンロウアトラスにも見られた特徴なので、母由来と感じさせるものがあります。

完成は古馬になってからだと推察しますが、素軽い面があるので2歳戦から仕上がっていく可能性はあると思っています。

非常に良い歩様をする馬なので、セール当日には№396アヴォンリーの2023のみならず、本馬にも是非ご注目ください。

 

本馬に関してお問い合わせがございましたら牧場公式サイトからご連絡いただくか、当ブログに連絡先を添えてコメント欄にご記入くださるようお願いいたします。

当場から折り返し連絡させていただきます。

 

【セプテンバーセール】№396アヴォンリーの2023(牡 父オルフェーヴル)

9月19日のセプテンバーセール3日目に、当場から生産馬2頭を上場予定です。

今回は№396アヴォンリーの2023(牡、父オルフェーヴル)を紹介させていただきます。

なお、本馬の牝系解説文(ブラックタイプ)はこちらからご参照ください。

 

 

【9月9日現在】体高151cm 胸囲173cm 管囲18.7cm 馬体重406kg

 

本馬の母アヴォンリーはJRAのダートで3勝した馬で、ダート1200という短めの距離を得意としていました。

アヴォンリーのきょうだいは、もう少し距離があった方がよいタイプが多いので、アヴォンリーの短距離スピードは彼女の父ヘニーヒューズに由来するものと見て間違いないでしょう。

実際、アヴォンリーはヘニーヒューズの牝馬らしく、普段から気の強さを前面に出すタイプの馬です。

ただし、馬格のほうは彼女の母ラヴァーズレーンの産駒らしく、牝馬ながら現役時代は480kg前後で競馬できたほどの恵まれた馬体をしています。

そのアヴォンリーの初仔として生まれた本馬は、現時点では小柄と言える馬体なので、母よりも父オルフェーヴルの馬体的特徴を受け継いでいる印象です。

離乳して1歳7月まで当場の1歳分場で過ごしてきましたが、気性面に関してはやんちゃながらも、すべきことは理解している賢さを持った馬であり、このあたりもオルフェーヴル産駒らしさを感じさせます。

現在は、地元の育成公社さんにセプテンバーセールへ向けてのセリ馴致のために預かってもらっています。

小柄な分、サラブレッドらしい品の良い馬体をしていますが、この先の後期育成に入ってからは牡馬らしい迫力のある馬体に成長してほしいところです。

 

アヴォンリーの配合は、当場でよく試してきたStorm Cat持ちの種牡馬×モガミヒメ牝系の組み合わせから生まれています。

 

 

モガミヒメ牝系にStorm Catを持つ種牡馬を配合すると、Storm Cat≒モガミポイントによる相似クロスができて、この配合の長所の一つだと考えています。

 

 

両馬の父系がStorm Bird≒Nijinskyの相似クロスを形成する関係にあり、それぞれの母父についてもScretariat≒ボールドラッドという3/4同血クロスの関係にあります。

この高い血統的親和性により、これら北米血脈を背景とした力強いスピードが遺伝されるのではと、配合段階から拘ってきました。

アヴォンリーに関してはダート短距離で成績を挙げてくれたので、比較的配合どおりの結果だったと思います。

その彼女にオルフェーヴルを配合して本馬が生まれたわけですが、それはこの配合にモデル馬がいることが関係しています。

それが、現役OP馬として頑張ってくれているオセアダイナスティです。

 

 

オセアダイナスティはアヴォンリーの半弟であり、本馬の叔父にあたる血統です。

また、それぞれ父がオルフェーヴルなので、血統的には非常に近い関係にあります。

オセアダイナスティの血統表を見てわかるように、アヴォンリーのようにラヴァーズレーンの血を引く繁殖牝馬にオルフェーヴルを配合すると、ノーザンテーストやシェリルといった名血のクロスができることがわかります。

オセアダイナスティはJRAで4勝を挙げて現在OPクラスに所属する馬ですが、本馬も彼の血統パターンを踏襲しているため、高い素質を秘めているのではと期待しているところです。

 

オルフェーヴル産駒においてはMr.ProspectorやSpecial、あるいはHaloやRibotといった名血を母方に持つ産駒が活躍傾向にあるものの、本馬の配合はあくまでオセアダイナスティをモデルにしているため、他のオルフェーヴル産駒とは血統傾向が異なります。

それでもオセアダイナスティがJRA4勝してくれていることから、本馬も相性が良い配合から生まれていると考えています。

 

本馬に関してお問い合わせがございましたら牧場公式サイトからご連絡いただくか、当ブログに連絡先を添えてコメント欄にご記入くださるようお願いいたします。

当場から折り返し連絡させていただきます。

 

【2024サマーセール】上場馬2頭をご購買いただきました

8月20日のHBAサマーセール2日目に、当場生産馬2頭を上場しました。

 

№223ハーランズワンダーの2023(牝、父サトノダイヤモンド)は田中成奉さまにご購買いただきました。

№259ベルキューズの2023(牡、父ルヴァンスレーヴ)は(株)カナヤマホールディングスさまにご購買いただきました。

 

当日の午前中は悪天候にもかかわらず、比較展示そして馬房前にて多くのお客様に下見していただきましたことに改めて御礼申し上げます。

お蔭様で、2頭とも台付価格の倍以上の評価で落札していただきました。

ここまでのサマーセールは1日目よりも2日目、2日目よりも3日目のほうが売却率が上がってきていて、平均すると80%に近い数字のはずです。

3日間ともセリ会場に顔を出していますが、購買者の皆さまの購買意欲が非常に強い印象を受けました。

この流れで最終日まで好調なセリであってほしいと願っています。

 

当場生産馬のノースブリッジ号がG2札幌記念を快勝!

8月18日の札幌第11R札幌記念(G2、芝2000)に当場生産馬のノースブリッジ号が出走しました。

 

 

G1馬3頭、そして昨年このレースを制しているブログノーシスたちが人気するなか、本馬は5番人気で出走しました。

レースで好スタートを切ったノースブリッジは、先頭を主張するアウスヴァールの2番手という位置でレースを展開していきます。

向こう正面では先頭との差がありましたが、3~4コーナーあたりで一気に差を縮めて最後の直線へ。

直線を迎えて鞍上の岩田康誠騎手のゴーサインで抜け出しを計ったノースブリッジは、一気に先頭に立ってそのまま後続を突き放す形となり、最後は2着馬に1馬身3/4差をつけて優勝しました。

馬主様をはじめ関係者の皆さま優勝おめでとうございます。

本馬は、2019年のセレクションセールで現在の馬主様にご購買いただきました。

当時のセールに向けた本馬の紹介記事は、以下のリンクからご参照ください。

【セレクションセール】№73アメージングムーンの2018(牡 父モーリス)

【1歳時のノースブリッジ】

 

普段からうるさい面があるのは相変わらずのようで、私も本州から北海道への輸送がどうなのか心配していましたが、やはりそこは海外遠征の経験が活きていたようです。

以前よりも遠征先でフィットするまでの時間が短くなっているようですし、普段から厩舎関係者の方々が管理してくださっている一方で、岩田康誠騎手も調教に跨ってくださっていました。

そして陣営の見込み通り、やはりこの馬は洋芝が合います。

最終コーナーからゴールまでの加速力は彼本来のものでしたし、彼自身のレースができたときは、本当に強い勝ち方をしてくれます。

また、鞍上の岩田康誠騎手の騎乗ぶりも、スタートからゴールまで終始完璧と言っていい見事なレース展開だったと思います。

陣営としては12月の香港Cが目標のようで、このレースを勝ったことでレーティングが上がるでしょうから、陣営の希望通りに選出されればと願っています。

香港に向けて1度レースを使うのか、それとも直行するのかはこれからの判断になるようです。

それにしても、彼の属するモガミヒメ牝系についてはローレルゲレイロが重賞4勝、ディープボンドも重賞4勝、そしてノースブリッジが重賞3勝とかなり層が厚くなってきました。

この3頭についてはそれぞれ海外経験もあるなど、本来は日本のローカル血統の牝系ですが、当場でこの牝系に力を入れてきた結果がJRAや海外での活躍に繋がっていると感じています。

現状、この牝系出身の重賞勝ち馬が牡馬だけなので、当場としては牝馬でも重賞勝ち馬を送り出したい思いもあるので、さらなる活躍馬を出せるように牧場一丸となってこれからも強い馬づくりを続けていきます。